研究概要 |
知的財産権の保護は、高度技術社会の運営にあたってきわめて重要かつ困難な課題の1つである。本研究では経営工学の立場から、米国で成立した線形計画法特許を中心に、ソフトウェア/アルゴリズム特許問題について研究を行なった。 上記の特許は、いわゆるカーマーカー特許とよばれるもので、数学そのものが歴史上はじめて特許指定されたケースとして、わが国の学界,ジャーナリズム等で大きく取り上げられたものである。本来、特許法は数学や自然法則自体は特許対象とはしない、というのが世界共通の原則であるが、米国では1981年に“数学的アルゴリズムといえども、それが十分に応用されたものである場合には、特許の対象となりうる"という最高裁判所(いわゆるDiawond対Diehr判決)が出て以来、次々とアルゴリズム/ソフトウェア特許が成立しているのが実情である。 そこでわれわれは、カーマーカー特許成立に到る歴史的経過および成立後の展開を専門的立場から調査し、その上で日米の学界/研究者たちがこの特許に対して示した反応を検証した。この際特に参考にしたのは、国際数理計画法学会のアルゴリズムと法律に関する委員会の報告,米国議会の技術評価局による報告書“Finduip a Balance",および日本OR学会数理計画法研究会報告書などである。 われわれは基本的に学問上および産業上いずれの立場からも、数学アルゴリズムおよびそれにもとづくソフトウェアの特許指定は望ましくないものであると考えるが、今後は今回の調査結果を踏まえた上で、数学的アルゴリズム特許に反対する論理を組み立て、ソフトウェア/アルゴリズムの保護はいかにあるべきかについて論じたいと考えている。
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