研究概要 |
対面接触によって情報の収集を行う場合,いかなる都市に居住する人が最も有利なアクセシビリティを保有しているか,その空間パターンは明治期以降どのように変化してきたかを定量的に解析した。 分析対象は59都市(県庁所在都市,北海道13支庁,ただし那覇は除く)とし,取り上げる年次は1898年,1904年,1915年,1934年,1961年,1990年の6時期である。分析手順は,1)各年次ごと都市間移動最短時間を求め,時間距離を組み込んだネットワーク図を作成する。2)各年次の時刻表をもとに都市間時間距離行列(59行59列)を構築する。3)この行列に最短パス操作法(Shimbel,1953)を適用して各都市の近接性(アクセシビリティ)を導出する。そして近接性の時系列的変化を追い,アクセシビリティをどの都市が強め,どの都市が弱めたかを把握する。4)鉄道時間距離行列に基づいた都市間の位置関係を多次元尺度構成法の援用により復元し,時間の経過とともに日本列島がどのように縮小してきたかを視覚的に把握する。以上の作業を本年度は行った。 アクセシビリティ値は,1998年には,横浜と静岡が最も小さい値をもち,旭川が最も大きな値を有した。日本列島中央部に位置する都市は近接性が高く,周辺部に向かうにつれて近接性が低いというパターンを呈する。1915年になると,それまで低かった西日本諸都市の近接性が相対的に高まった。とくに近畿地方諸都市の近接性が急速に向上した。1934年になると日本海地域の都市の近接性が向上した。明治期以降四国の近接性はずっと低かったが,1961年になるとそれが改良された。1961年の近接性面をみると,列島中央部から縁辺部に向かってなだらかに等値線が引かれ,日本列島のゆがみが以前と比べて少なくなった。1990年になると,東京は3つの新幹線の起点となり近接性が飛躍的に増加した。また,新幹線の開通は東日本よりは西日本の近接性をより高める方向に働いた。それに引きずられる形で,北海道の諸都市より九州の諸都市の方が近接性の向上は著しかった。
|