研究概要 |
1,動物霊:霊力は種によって異なり、性質強猛なものが霊力も大であること。動物には狩猟対象となるもの、ならないもの、信仰・尊崇するもの等に区別されること。これら動物観や動物霊に関する意識は後世の神道や仏教での説話伝道の影響が大きいことなどを明らかにした。また、人々に親しまれ昔話の題材でもあるたぬき観では、生物としてのタヌキとの位相が大きく、この差はタヌキの実体がよく知られる現在でも存在することを明かにした。2,鳥獣分布;1730年代の盛岡領、金沢領、名古屋領内での分布の概状を明らかにした。これらの分布概状を詳細にするための広島藩、八戸藩、萩藩領、薩摩藩などの鳥獣情報約1000件などの史料収集とデータベース化を行なった。また、東北北部のニホンザルの分布については、減少の兆候は近世に始まり、背景には江戸時代の寒冷化→農業への打撃→狩猟への依存の増大と明治期の村田銃と西洋銃の普及だったことを明かにした。3,鳥獣行政;明治16年政府が全国に旧藩時代の鳥獣行政・慣行を報告させているがその控え文書が奈良県と埼玉県で保存されていた。それらも含め当時の鳥獣行政慣行の実態を村レベルで知ることができる貴重な資料の発見もあった。明治初期に諸府県が鳥獣の激減に危機感を持ち独自の条例を公布し始め、これが政府を動かすに至った過程を明らかにした。4,動物観アンケート結果:平成4年秋日本モンキーセンターにおいて815名に動物観についてアンケートを実施した。若い女性はカエルやムシが嫌いであること。獣へのイメージは男は「たくましい」、女は「こわい」と感じていること。また「獣を見た」「獣の肉を食べた」という体験と獣に対して肯定的好意的な感情とが正の相関関係にあるという結果が出た。また70%の人はヒトは「サルから進化」したと考えており、米国人の約90%余が「神による創造」を受け入れている結果とは対照的であることなどが判明した。
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