研究課題/領域番号 |
04212120
|
研究機関 | (財)日本モンキーセンター |
研究代表者 |
河合 雅雄 (財)日本モンキーセンター, 所長 (10027477)
|
研究分担者 |
三戸 幸久 (財)日本モンキーセンター, 学芸員 (10150137)
池田 啓 文化庁, 文化財保護部, 調査官
花井 正光 文化庁, 文化財保護部, 調査官
安田 健 自然環境研究センター, 研究員
千葉 徳爾 明治大学, 大学院, 講師 (80015958)
|
キーワード | 動物観 / 狩猟 / 鳥獣分布 / 鳥獣行政 / 江戸時代 / 明治時代 / 宮沢賢治 / トキ |
研究概要 |
1.日本人の動物観を考える上に重要な示唆を与える宮沢賢治と動物の世界を論考した。“なめとこやまの熊″はマタギの民話が底流にあり、そこに猟師の心情を読みとることができる。作品には動物が総計約200種登場する。多くは身近な動物で外国産動物は賢治の心象風景の理解に重要である。昆虫への関心は薄い。総じて、動物学への興味は薄い。奥山のカモシカなどは登場せず、ほとんどは村里・里山の動物である。山猫を奥山と里山をつなぐ媒介者とみると、作品の新たな理解が展開しそうだ。 2.伝承での虚像の「たぬき」は文化という環境の中でさまざまなバリエーションを生んだ。実像の「タヌキ」は時代とともに変化する虚像の「たぬき」の姿を修正しなかった。日本人は実像の動物とインタラクションを持たず、内部に取り込まれ虚像の動物とインタラクションしてきた。 3.江戸期の諸国産物帳で復元された鳥獣分布を補充修正するため資料収集し、データベース化を進めた。旧南部藩・旧琉球国・旧薩摩藩などの資料を収集し、これら資料から鳥獣関連記事を検索しデータベース化をした。 4.江戸期から明治にかけてトキの分布変遷が明かとなった。江戸初期の分布は東日本に片寄っていた。徳島領などでトキを取り寄せ繁殖させたこともあって分布を広げ、江戸末期には日本全域に生息するようになった。明治になると江戸期の規制が反故となり鳥獣が激減した。トキはその最も顕著な例であった。 5.明治以降から第二次大戦後のハンティングの興隆は野性動物に壊滅的な打撃を与えた。奥山の森林伐採はニホンザルに里山偏重の遊動を定着させ害獣化させた。背景には明治以降すべての価値を貨幣価値に換算する強力な経済活動があった。そして畏敬の念も含まれたアニミズム的な属性や力は喪失し、サルは嘲笑と駆除の対象となった。日常的な接触も激減し、野性動物との正しい接し方も人々の記憶から喪失していることが明らかとなった。
|