研究課題
本年度は専ら各分担研究者が資料の収集とその分析を通じて仮説の構築と検証に取り組んだ。研究班としては、日常の交流・議論以外にも二度の研究会を通じて、さまざまな観点からの集中的な検討を行った。これにより各研究の内容を深化させ、同時に研究の方向・関心の統合をはかることができた。なお各研究会においてなされた報告は、第一回(7月17・18日、神戸大学)が「鳩山・岸路線と戦後政治経済体制」(久米)、「戦後利益団体の形成」(辻中)、「戦後日本の政党制の形成」(的場敏博:公募)であり、第二回(9月18・19日、筑波大学)が「戦後日本の対外意識」(三宅)、「占領下の政党-民政局と社会党」(福永文夫:班外)、「農地改革の史的考察-戦後体制と農村」(宮崎)、「GATT加盟-戦後の経済的国際復帰」(田所)、「公社・公団の形成をめぐる政治過程」(御厨)である。また御殿場会議では宮崎が前記報告をさらに発展させ報告を行った。本研究の目的は、1950年代の政治変動を経て戦後体制が形成される過程を実証することにあったが、平成4年度は特に戦後体制の基層をなす社会集団のレベルに焦点を当て研究を進めてきた。つまり、占領改革の受益層としての社会集団が戦後政治体制の支持基盤となる様子を、団体の形成とその政治的機能という点から検討した。具体的には事前の分担通り、久米が労働団体、細谷が経済団体、宮崎が農業団体をそれぞれの関心と方法から専門的に分析する一方、辻中が戦後の団体政治を総括的に研究している。また田所と御厨はそれぞれ対外貿易と公共政策という戦後日本経済の二つの基軸に対する政策的対応に注目し、団体の政治的機能を解明しようとした。五百旗頭は分担研究の総括・調整に加え、政党政治レベルでの戦後体制の形成を対象とする公募研究や班外からの参加を積極的に取り入れ、研究の重層性を確保した。