昨年度は上記研究課題につき、資料の収集・分析、および研究会での報告・意見交換を行いながら、研究発表に一定の成果をあげることができた。 まず、資料収集としては、米国国立公文書館への複写依頼、およびマイクロフィルムの購入により、アメリカ国務省の資料を多数、新たに収集することができた。また、国会図書館や大宅壮一文庫などで日本側の新聞・雑誌資料を収集した。 それらの資料をこれまでに収集した資料と比較しながら整理し分析することにより、いくつかの重要な情報を得ることができた。さらに計画研究の北岡、五十嵐両班の研究会や合宿に積極的に参加し、両班のメンバーと活発に知識・意見の交換を行ったことも研究の進展に大いに役立つものであった。 研究成果の発表としては、国際政治学会(5月)において、鳩山政権の外相重光葵の対米外交に関してアメリカ側の新資料を紹介・分析する報告を行った。そしてその報告の一部をさらに発展させ、「重光訪米と安保改定構想の挫折」と題する論文にまとめた。これは、従来あいまいにされてきた重光の安保改定提案(1955年)の内容を明らかにするとともにその戦後日米関係における意義を考察するものである。また、国際問題研究会(6月)では、日ソ国交回復交渉(1955-56年)対するダレス国務長官とアメリカ国務省の対応に関して報告を行ったが、これについても論文を執筆中である。 なお諸般の事情で当初予定していたインタヴィユーの年度内実行ができなかったが、なおその準備を続けている。来年度は計画研究への参加を申請しており、さらに研究を発展させたいと思っている。
|