研究概要 |
本研究は,広範囲に分布する比較的深度の大きい埋没遺跡群を迅速かつ高精度に3次元的に探査することを目的としている。このため,まず広域に面の調査法である水平探哉を実施して,得られる異常分布から探査対象域の範囲を絞り込む。ついで断面の調査法として,探査対象の地質スケールを考慮して高密度のスキャン調査を実施する。さらに,埋没異常体の固有比抵抗および厚さを評価するためボーリング調査に相当する垂直探査を実施する。すなわち,このような面から線,線から点への調査をパソコンを利用することにより,データ取得から3次元画像処理に至るまでオンサイト処理することが可能となる。平面の調査法として流電電位法を,断面の調査法としてPole-Dipole法を,垂直探査法としてSchlumbrger法を併用している。これまで,このような複合探査法をカルスト台地やシラス台地などの自然溶解空洞,ならびに石炭採掘跡,トンネル,防空壕などの人工空洞,浅熱水性の金銀鉱脈の探査などへ応用することにより,その探査限界を把握することができた。すなわち,遺跡探査の場合のように,地下浅部のしかも地質スケールが小さい埋没体を高精度に探査するためには,通常の測定方式では空間分解能が低下することが明らかになった。そこで,著者らはまず3次元モデリングのソフトウエア(FDM3D)を開発し,種々のシミュレーションにより,空間分解能の観点から電気探査法について吟味した。その結果,例えば横穴古墳群の場合には,従来の見掛比抵抗データのみでは,空間分解能が不足することを確認した。したがって,著者らは高精度の電気探査法であるポールダイポール電極配置を用いて,しかもテンソン電界(Ex,Ey)を計測する方法を提安した。そして,コンピュータシミュレーションおよび野外実験などから,このようなテンソル電界を求める電気探査法の有効性を検証した。
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