中央大学の深井らによれば、Feは5GPa以上の圧力では水素とほぼ等モル比の化合物FeHxを作り、Fe-FeH系の共融温度は純鉄に較べ数100℃低下することが知られている。我々は東工大のマルチアンビル装置を用いてFeとカンラン石の混合物を高圧下で加熱し、更に水素と反応させてFeH-カンラン石システムの溶融組織を電顕観察した。その結果(1)FeHの融点が5〜10GPaの圧力範囲で約800℃程度であること、(2)水素源に加えてH_2Oの存在下では、Fe-FeH-FeOの共融現象が起こり、7GPa以上の圧力では共融液に10%以上のFeOが溶存すること、などを明らかにした。今回の実験圧力範囲内では溶融FeHとカンラン石の二相分離は進行せず、金属メルトとシリケイト間の表面エネルギー差は水素の存在下でもあまり低下しないと考えられる。しかしながら天然の炭素質コンドライトを用いた融解実験では(3)15GPa以上の圧力になるとFe-FeO-FeSの共融液の組成がFeOに富む側にシフトし、且つ融液の表面張力が低下してカンラン石の隙間を埋めるネットワーク構造を形成することが判った。17GPaの圧力下で隕石を構成するシリケイト相(主としてピネルとメージャライト)の共融温度より約100℃低い1700℃に於いて10分〜60分の実験を行いそれぞれの組織を観察した。この実験では60分以内に大半のFe-FeO-FeS共融液がパーコレーションによりシリケイトから分離した。(1)、(2)、(3)の観察を基に惑星形成時のコア形成過程に関するモデルを作り1992年8月のIGC京都国際会議で発表した。
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