高歪化合物としてシクロファン骨格を選び、その中に高原子価ハロゲン原子を組み込んだ化合物の合成経路を検討した。[3.3]メタシクロファンの9位、18位をハロゲンで架橋した高歪シクロファンを採用し、その中でも架橋部分の2位、及び11位をそれぞれメチレンあるいは窒素原子としたものをターゲット化合物に選んだ。側鎖部分がメチレンのものは、TosMICを用いる環化法により出発物質である8-ハロゲノ[3.3]メタシクロファンを合成した、また2および11位のジアサ体は、アミンのアルキル化の改良法によって合成した。2、11-ジアザ-8-ヨード[3.3]メタシクロファンを種々の酸化条件下でヨウ素架橋体ヘの変換を試みたが、いまのところ目的のヨードニウム体は得られていない。その代わりにヨウ素原子が取れてビフェニル体が得られる異常が起こった。 また2、11位のジオキソ体をWolff-Kishner条件下で還元する際にもヨウ化水素がトランスアニュラーE2脱離したかたちの異常反応が起こり、[3.0.3]-(1、2、3)シクロファントでも呼ベる架橋ビフェニル誘導体が得られた。 通常の反応ではハロニウム体は得られないので、ジアゾニウム塩とハロゲンとの反応によるルートを採用し、その原料として9-ハロ-18-アミノ体を合成するため、それの2、11-ジオキソ-ニトロ体のWolff-Kishner還元を行ったところ、目的のアミノ体は得られずジフェルアミン誘導体が得られた。この反応は通常に化合物では起こらず、この系のようにハロゲン原子と、この反応条件でニトロ基が還元されてできたアミノ基が無理に接近させられ、歪みがかかったためにこのような異常反応が起こったものと考えられる。
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