研究概要 |
1)パテジウムを触媒として用いるアレニルアルコールの立体選択的アリルアミノ化反応:アリルアミンは生理活性物質合成の鍵化合物として重要である。しかし、アリルアミンを位置、および立体選択的に合成することは現代有機化学においてすら困難な課題の一ちである。我々は、N-トシル-O-2、3-ブタジエニルカーバメートが触媒量のパラジウムと塩化アリルとの反応により、そのC_3,C_4炭素上でそれぞれアリル化とアミノ化を同時にうけ4-(1'-メチレン-3'ブテニル)オキサゾリジン-2-オンを選択に与える反応の開発に成功した。オキサゾリジン-2-オン55位炭素上に置換基が存在する場合はトランス異性体のみが選択的に得られた。生成物は加水分解により定量的にアリルアミンヘと誘導できる。従って、この方法はアリルアミンの位置および立体選択的合成法として極めて有効である。 2)N-置換3-アミノ-4-ペンテン-1-オールの沃素環化反応における立体選択性に及ぼす置換基の立体電子的効果:表記化合物は沃素環反応によりシス、トランス-3-アミノ-2-沃化メチルテトラヒドロフランを定量的に与えるが、そのシス体と、トランス体の生成量の比が窒素上の置換基の電子吸引性の強さと直接関係していることを発見した。即ち、電子吸引性が増せば増す程、高いシス選択性を示した。この現象は、オレフィン最高被占軌道と窒素の非共有電子対、およびオレフィン最高被占軌道と炭素-窒素結合の反結合性軌道の相互作用をもとにして、立体配座の違いもとづくオレフィンの沃素イオンに対する親電子活性の違いとして旨く説明された。
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