研究概要 |
15.16族典型元素を中心原子とするオニウム化合物RnAX(A=S,P,Se,As,Te,(O),(N)など;R=Et,Me,Ph,p-F-Phなど;X=BF_4,NO_3,Cl,1/3PO_4,1/2SO_4など)の分子軌道法による最適化構造は、例えばMe_3SCIではC_3v対称であり、Me_3SIのX線解析構造やDMSO-d_6/CDCI_3中での ^1H-NMRの結果と一致した。超原子価オニウム化合物RnAX(n=3.4)は中心原子(A)、置換基(R)、および対アニオン(X)の差異によりその触媒活性に差異がみられるものの、明らかに炭化水素(クメン、テトラリンなど)の液相酸素酸化において反応促進作用を示し、その活性はAでは最低空3d軌道を有するスルホニウムおよびホスホニウムにおいて極めて高く、Rは電子供与性の大きいほど、Xは相当酸の適切な酸性度(共有結合性)の大きいほど高活性であった。オニウム触媒を用いた酸素酸化反応はその反応速度の経時変化が指数関数の差として示され、酸素活性化工構から導かれる式とよく一致し、オニウム触媒にゆる三重項酸素活性化触媒作用が示唆された。RnAXは、λmax〜200nm(5.90eV)付近の(p) ^2→(p)(d)遷移(ASMO-SCF:5.01〜6.4leV)が、分子状酸素と相互作用すると△λ=0.02〜0.14eVの範囲で長波長シフトし、オニウム触媒の中心原子の部分被占d軌道を通じた分子状酸素πg軌道への電荷移動によりd軌道の安定化が生じたと考えられた。事実、触媒活性(Rmax)と△λにはよい相関が見られ、また、オニウム中心原子のdyz軌道の電子密度はRmaxあるいは△λとの良好な直線相関を示した。したがって、15.16族有機典型元素化合物はオニウム型の超原子価結合形成(hypervalent bond formation)という異常状態(anomalous state)をとることにより最低空軌道の部分被占化(d軌道のs、pとの融合)を経て遷移金属類似の触媒機能を発現すると考えられる。
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