研究概要 |
スズクラスターの高次接合のためには、裸のスズを含むプロペラン類が有効と考えられる。しかしスズクラスターは最近見い出されたばかりで、これからの発展のためにも種々の合成法や、多様なクラスターを見い出す事を要する。今までの熱分解による合成法に加え、アルカリ金属による低温分解、再構築法を検討し、効率的なクラスター合成法を見い出した。その過程で、〔1.1.1〕プロペラン生成過程を明らかにし、更に、新しいプロペラン型クラスターをも見い出した。この事により、〔1.1.1〕スタナプロペランが特殊な存在でなく、より一般的なものであると考えられるようになった。更に、プロペラン類のより一般的な性質、反応性をあきらかにする事によって、高次接合-オリゴマー化の方向を見い出す事を考えた。この結果、プロペラン類には、熱的にかなり安定なアニオンラジカルが存在する事、2-の2価アニオンが存在する事、メチルリチウム、ヨウ化メチルなどとの付加反応が進行する事を見い出した。残念ながらプロペランは非常に安定で、単純な金属錯体を形成しにくく、TiCl_4,SnCl_2,CuX_2,Ti(C_5H_5)_2Cl_2などとは反応しない。アニオンラジカルを用しても、もとのプロペランへの酸化反応のみが進行する。そこでメチルリチウムを付加して化合物と、各種錯体や、ハロゲノアルカンで反応した。BrCH_2CH_2Brを用いると、メチルプロペランの二量体化が、またTi(C_5H_5)_2Cl_2とではClとの置狭が進行している。これらの反応によって、プロペラン類を用いたスズクラスターの高次化を見い出す事が可能となった。キュバン、プリズマンのような多面体型クラスターの高次化には、段階的合成法による置狭基の部分的変化を要する。現在段階的合成法は確立できず、この問題は将来的課題となった。
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