オートマタ・ネットワークの学習能力や自己組織化能力を研究する第一段階としてまず与えられたネットワークの動作を解析し評価する適切な手段を確立する必要がある。具体的にネットワークが実現すべき仕事が与えられているとそれをどの程度効率的にあるいは誤り少なく行なえるかで評価基準を定める。問題はこのような全体としての結果の評価とネットワークの構造をどう結び付けるかである。我々は状態の集合から実数への写像(状態関数)がネットワークのある特性(即ち、評価関数や適応関数、等)を表現していると考えらこの問題にアプローチした。 具体的に2状態を持つ素子のネットワーク即ちプール関数のネットワークを考える。この時一般に状態関数が満たすべき条件を明らかにし、次いでリヤプノフ関数の存在条件を求めた。即ち、与えられた状態関数がプール関数ネットワークノリヤノフ関数となっているために各素子がどのようなプール関数でなければならないかを明らかにした。ここでの結論の一つは、高次の神経回路網を考える限り、任意の状態数数がリヤプノフ関数となるようなネットワークが存在することである。状態関数やプール関数を正項表現を使って表現することによってリヤプノフ関数や関数ネットワークノ次数議論することができる。状態関数がd次であれば、それをリヤプノフ関数とする(d-1)次のプール関数ネットワークが存在する。 このようなネットワークの応用の一つとして単語の意味ネットワークを考え、状態遷移によって単語集合が自己組織的に形成される過程をシミュレーションした。単語間の類似度を各単語が持つ意味素の中で相手の単語の意味素と共通なものの割合で表現する、先に述べたリヤプノフ関数の存在条件を満足することが示せる。形成された単語集合についてその代表元的な単語を一定の評価法で選定することによって概念の自己組織への第一段階を明らかにした。
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