研究課題/領域番号 |
04220106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉浦 幸雄 京都大学, 化学研究所, 教授 (40025698)
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研究分担者 |
山田 清之 名古屋大学, 理学部, 教授 (90022540)
小林 進 (財)相模中央化学研究所, 主席研究員
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キーワード | 生物活性分子 / DNA認識 / DNA切断 / エンジイン化合物 / ダイナミシン / ブレオマイシン / プタキロサイド / CC-1065 |
研究概要 |
天然生物活性分子による核酸の構造認識と機能発現をテーマに数多くの新しい知見を得た。特に、世界的に大きな注目を浴びている強力な抗癌活性を有するエンジイン型化合物のDNA認識と作用発現に関して、格段の進展が見られた。すなわち、水溶性の9〜10員環モデルエンジイン化合物の合成とその塩基選択的なDNA切断の確認は、エンジイン核周辺領域に重大なDNA認識能が備わっていることをもらした。また、エンジイン核とアンスラキノン環を合せもったハイブリッド型化合物ダイナミシンのDNA切断におけるDNA高次構造の影響について検討した結果、ステム・ループ構造DNAではダイナミシンの切断部位は2本鎖状態のステム部分に集中し、B型とZ型とを同時に含むDNAではB-Z接合領域の若干の塩基に対して著しい切断の増強が認められた。バルジ構造をもつDNAに対しては、バルジ塩基近傍の反対鎖に顕著なダイナミシンの切断増強が検出された。これらの現象は、ダイナミシンがインターカレーションによってDNA塩基間の水素結合がすこしゆるんだ部位に相互作用していると考えると合理的に説明できる。DNAの特徴的な高次構造と生物学的な機能との関連性を考えると、ダイナミシンのこのような性質は非常に興味深い。他方、非天然型糠鎖の導入を目指した人工ブレオマイシンの合成の鍵段階となる糠鎖導入の優れた合成法が開発された。ワラビの発癌成分プタキロサイドによるDNAの修飾に関しても、特異的なグアニンおよびアデニン残基への結合と切断が認められ、CC-1065との相違点・類似点が考察された。これらの研究成果は、核酸を標的とする生物活性分子の分子作用機序の解明や新しい機能性分子の設計・開発に価値ある知見を提供している。
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