哺乳動物細胞(骨格筋など)の筋収縮連関の引き金となる筋小胞体からのカルシウムイオンの遊離には。カフェイン感受性のカルシウムチャンネルが関与していることが知られている。Eudistoma属のホヤより単離したeudistomin類の筋小胞体カルシウム遊離促進作用に着目して、カフェインの100倍の活性を示す7-bromoeudistominD(BED)を既に合成している。そこで、BEDのピリジン環の窒素原子の活性への寄与を調べる目的で、BEDのピリジン環の窒素原子を炭素原子で置き換えたカルバゾール化合物や、BEDのピリジン環の窒素原がα位に位置するα-カルボリン化合物を種々合成し、これらの化合物の筋小胞体カルシウム遊離促進作用を調べた。その結果カルボリン骨格のピリジン環の窒素を2位から1位に移してもCa^<2+>遊離活性にほとんど影響を与えなかったが、2位の窒素を炭素に置換すると活性が弱まると同時にCa^<2+>感受性が減少した。ベンゼン環の5位と7位臭素もCa^<2+>遊離活性に関与しており、その一方を除くかあるいは塩素と置換すると活性を抑制する傾向が現れた。また、ピリジン環の3位に置換基として臭素が入ると活性が著しく減少した。これらの結果に基づいて、カルボリンの一位の窒素を炭素に換え、7位の臭素を除き、3位に臭素を導入したカルバゾール化合物を実際に合成して活性を調べたところ、Ca^<2+>-inducd Ca^<2+>releaseを強く抑制した。以上の結果は、BEDのCa^<2+>遊離には、β-カルボリン骨格の2位の窒素、及び5位と7位の臭素が重要であり、3位の臭素はCa^<2+>遊離抑制に関与することを示している。
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