研究概要 |
(1)カルボヒドラーゼの加水分解反応に対するアイソトープ効果を調べた。酵素合成した[1,1'^<-2>H]-Iso-maltoseにに数種のα-グルコシダーゼおよびグルコアミラーゼを作用させ、速度パラメータを求め、[1,1'^<-1>H]-Isomaltoseに対する値と比較した。K_m値には変化が認められず、V_<max>のみが大きくなった。これらの結果はα-第二次アイソトープ効果の一例と考えられ、カルボニウムイオン中間体を経由する反応を示唆している。 (2)自殺基質による糸状菌α-グルコシダーゼの親和標識反応を解析し、修飾部位(触媒基)を推定した。合成したConduritol B epoxide(CBEと略)を本酵素に作用させると、擬一次的に活性が減少した。この失活はMichaelis中間体経由のものであることが判明し、本酵素とCBEが等モルで反応することが認められた。部分修飾酵素のMaltoseに対する速度パラメーターを調べたところ、K_m値は変化せず、K_0のみが低下していた。拮抗阻害剤であるTrisにより、失活反応が完全に防御された。失活のpH依存性から得られたpK値は基質水解反応における酸性側の活性解離基(-C0O^-のpKe値と一致することから、CBEは解離型のカルボキシル基(触媒基)に結合すると推定された。CBEとカルボキシル基の間に形成されたエステル結合を加水分解し、遊離するInositolをscyllo-Inositolと同定した。CBE処理した酵素をLys-C Protease消化し、CBE標識ペプチドを得た。このペプチドの配列解析を行なったところ。Asp^<224>のみの収量が低下していた。NH_2OH処理によりCBEとカルボキシル基間のエステル結合を切断し、再び配列分析に供すると、収率の回復が認められた。従ってCBEの標識部位はAsp^<224>であり、この残基が本酵素の触媒基の一つであることが判明した。
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