渦鞭毛藻ゴニオラックスの生物発光時計の周期を短縮する物質ゴニオリンの生合成については、メチル基についてはメチオニン由来であることを明らかにしたが、母核についてはメチオニンのC1炭素が取り込まれないため未決定であった。そこで、まず藻内に関連化合物を探索したところ、新規なスルフォニュウム化合物がメチオニンの添加によって増加することを見い出し、その構造を機器分析によって推定し、さらに合成によって、絶対構造を含めて明らかにした。この化合物の構造から、メチオニンのC1炭素は藻内において容易に脱離することが分かり、ゴニオリンもC1炭素の脱離を伴って生合成される可能性があるため、メチオニンのC2とC3をラベルした化合物の合成法について検討した。その結果、アセトニトリルより短段階にて誘導する方法を開発し、現在ラベル化合物の合成を行っている。 発光反応における基質の酵素による分子認識過程を明らかにするためには、ルシフェリンの詳細な構造を明らかにする必要がある。そこで発光反応に必須であるD環部の絶対配置を決定するために、オゾン分解で得られるD環部由来の化合物を立体選択的に合成し、微量にて絶対配置を決定する方法を確立した。この方法を用いて、ルシフェリンならびにオキアミ蛍光物質FのD環部の構造が、クロロフィルと同一であることを明らかにした。従って、渦鞭毛藻とオキアミにおける発光反応様式の差は、D環以外の構造の差によるものと推定された。
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