(1)第二世代10員環アナログのアルコールは、非常に興味あるpBR322DNA切断活性を示した。その顕著なG塩基選択性は、当初、ラジカル機構によると推定していた。しかし、DNA切断をポリアクリルアミドゲル電気泳動により詳細に検討した結果、アルキル化機構で進行している可能性が高くなった。また、グアノシンとの反応も検討した結果、グアニン部位がトリガーとなって芳香環化した付加体が生成することも分かった。現在、DNAとの付加体が生成するか、するとすればどこで結合するかを精査中である。 (2)DNA認識部位として、マイナーグルーブバインダーで、ATに親和性の高いネトロプシンアナログを結合させた新しいハイブリッド分子の合成法を確立した。そのDNA切断活性は、当核研究でこれまでに合成した化合物の中で最強であった。 (3)本研究で従来合成した第一、第二世代モデルは、いずれも共役ケトンであった。これではトリガーにより芳香環化しても、生成するビラジカルの片方は、安定なπラジカルである。二個とも活性の高いσラジカルにできれば、ラジカル機構によるDNA切断が促進されると期待された。このでザインに基づき、ケトン部をアルコール誘導体の脱離基とした化合物を数種類合成した。その中で、核酸塩基へのインターカレーター機能を有すると期待される、ネオカルジノスタチンクロモフォアのナフトエートエステルを脱離基とした化合物が、第二世代アルコールより約50倍のDNA切断活性を持つことが分かった。それがどのような塩基(配列)選択性を示すか検索中である。
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