研究概要 |
我々は細胞毒性を有する天然物のうち,近年単離された,アミノ酸を構成成分とする,特異な骨格を有する化合物を対象として,構造と機能の相関を究明することを目的に本研究を行っている。具体的な標的物質としては,海洋動物タツナミガイDolabella auriculariaの産生するドラスタチン10,ならびに肺炎カン薗の一種Klebsiella pneumonia var oxytocaの二次代謝産物ティリバリンをとりあげた。 1.ドラスタチン10類縁体の合成研究 ドラスタチン10は,強力な抗腫瘍活性を有する鎖状ペンタプチドである。このものは抗癌薬としての期待が高く,現在米国のNCIにおいて臨床段階に入っているといわれている。我々はすでにドラスタチン10の効率よい立体選択的合成に成功している。本研究では,ドラスタチン10のC端Doeユニットの,さらに効率よい合成法を検討し,不斉環元,DPPAを用いる光延反応を鍵工程としてその効率的合成法を確立した。さらにハイドロキシピナノンをキラル補助剤として不斉アルキル化によるDoe2ユニットおよびその数縁体の合成研究を行った。 2.ティリバリン類縁体の合成研究 我々はすでに新規マンニッヒ型反応を鍵工程としてティリバリンの立体選択的合成に成功し,それを応用してティリバリンのインドール部分を他の官能基に置換した類縁体や,ティリバリンのプロリン部分を他のアミノ酸にかえた同族体の合成を行った。今回さらにティリバリンのベンゼン環部分を他の芳香環に置換した種々の類縁体を合成した。これらティリバリンおよび類縁体は,多かれ少なかれ細胞毒性を有することを立証した。
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