研究概要 |
平成2年度および3年度の基礎実験を基にして今年度はAg/Fe人工格子の生成を行った。基板としてスライドガラスおよび石英ガラスを用いた。それと室温に保ち,その上にバッファー層としてAgを300〜500Å蒸着した後,AgとFeを交互に一定の周期をもって蒸着した。Ag,Feの一層の厚さは3〜30Å程度であり,周期は30〜50回である。Agの蒸着はクヌーセンセルにより行い,Feの蒸着は電子ビーム法によった。 生成されたAg/Fe多層膜をX線回折によって構造の評価を行った。高角領域でAg(111)およびFe(110)によるピークが観察された。また、低角領域において人工格子に基づく1次のピークが観察された。例えばAgを24Å,Feを10Å交互に32周期蒸着した試料において,FeKα線で32°において1次ピークが観察された。2次以下のピークまたメインピークのまわりのサテライトピークは観察されなかった。 また,人工格子膜をガラスからはぎ取り電子顕微鏡による観察を行った。透過電顕像として大きさが数100Åのグレインが多数観察された。電子回折では膜が多結晶から構成されていることが明らかになった。試料傾斜から膜が特に配向性を持たないことが確認された。 これらの実験結果から次のことが結論される。Ag/Fe系においては,ほぼ設計どうりの周期をもつ積層膜ができている。しかし,Ag-Fe界面はシャープではない。各層は数100Åのグレインから成る多結晶で構成はシャープではない。各層は数100Åのグレインから成る多結晶で構成されている。 今後の指針として,良質のAg/Fe系の人工格子膜を得るには,基板の物質を選ぶこと,基板の温度を低温にすることが重要と考えられる。
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