研究概要 |
真核生物のカルモデュリン(CaM)は、EF-ハンド構造を持つ4つのカルシウムイオン(Ca)結合部位を持つ。CaMの1次構造は種の違いを問わず90%以上の高い相同性がある。Ca結合部位はN,C両末端側に2つづつ対になって存在しており、C末端側の2つが高親和性部位である。酵母菌のカルモデュリン(YCMO)は他のCaMと1次構造の相同性が60%程度しかない。YCMOでは最もC末端側に位置するCa結合部位が潰れており1分子当たり3個しかCaを結合しないことが知られているが、どのCa結合部位が高親和性であるのかが明らかでなかった。我々は、YCMOのCa結合特性についてNMRを用いて調べた。YCMOにはN末端側とC末端側にそれぞれ1個のHis残基(61,107)がある。His107は他のCaMでもよく保存されているが、61番はCaMではGlyである。遺伝子操作によってHis61をGlyに置換した変異体(YCM61G)を発現させた。YCMOとYCM61Gの重水溶液の1H-NMRスペクトルを比較することによりHis61,His107のC2プロトンのシグナルを帰属した。YCMOの重水および軽水溶液にCaを滴定し、スペクトルを測定した。Caを加えるにつれてスペクトルは大きく変化し、この変化は[Ca]/[YCMO]=3で終了した。スペクトル変化を解析した結果、[Ca]/[YCMO]=0-2で大きく変化するシグナルと[Ca]/[YCMO]=2-3で大きく変化するシグナルの2種類に大別できることがわかった。先に帰属したHis61のシグナルは[Ca]/[YCMO]=0-2で変化するタイプに属することがわかった。また、[Ca]/[YCMO]=0-2で現われるアミドプロトンのシグナルにはCaMのNMRスペクトルとの比較からGly25と11e27と考えられるものが含まれていた。この結果は、YCMOはN端側の2つのCa結合部位が高親和性部位であることを示している。YCMOのCa結合特性はCaMとは異なることが明らかになった。この結果は、2つのCa結合部位が対になって何らかの安定な高次構造を形成することが高いCa親和性を持つための重要な鍵であることを強く示唆している。
|