フェレドキシン(Fd)は広く生物界に存在し、様々な代謝系で電子伝達体として機能する鉄-硫黄蛋白質である。本研究では光合成細菌Rhodoacter capsulatusが持つ幾つかのFdの一つ(FdI)をとりあげ、その変異Fdの生理機能を評価するとともに、大量発現系を構築し変異Fdの物理化学的性質を調べた。既にFdI遺伝子(fdxN)のクローニングは完了しており、またfdxN破壊株は窒素固定条件下で生育が著しく遅くなることを明らかにしている。平成4年度の研究成果は具体的に以下の通りである。 1。部位特異的変異を加えたfdxNを含むフラグメントを発現ベクターに挿入し、発現プラスミドを得た。ここで光化学系蛋白質をコードする遺伝子群のプロモーターを用いた。E.coliから接合により発現プラスミドをR.capsulatusのfdxN欠損株MSAIへ導入し、変異Fdの大量現系を構築した。 2。本Fdに特徴的なC41とC50の間の8残基を少なくするようなプラスミドをMSA1に導入したところ、どれも窒素固定条件下で野生株と同程度に生育した。このことからこのループアウトは、生理機能上重要でないといえる。またC54またはC59がセリンになるようなプラスミドを導入したところ、後者は野生株と同程度に生育したか、前者はMSA1と同程度にしか生育しなかった。 3。FdIの変異蛋白質を嫌気条件下で精製した。C41とC50の間の残基をGAに置換した変異Fdは、可視近紫外のCDスペクトルでは野生型FdIと似ていたが、紫外部でのCDスペクトルでは違いがみられた。変異FdIのEPRスペクトルは野生型FdIと異なり、典型的な2[4Fe-4S]型Fdのスペクトルに近かった。
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