研究概要 |
1.電子的および玄体的にデザインされた四配位型Co(Salen)誘導体を合成し、これらの3-メチ-ルインドールの二原子酸素添加反応(モデルTDO反応)の融媒作用と融媒錯体の酸化環元電位および配位子の位体化学との相関を系統的に研究した結果、このモデルTDO反応は、基質の電荷移動を伴う融媒への配位により脱プロトン化が容易となって基質がアニオン種に変換され、酸素がこのアニオン種に非ラジカル的に取り込まれる過程を含け反応機構で進行することを明らかにした。この酸素取り込み過程はコバルト(III)中心のルイス酸としての作用により、電荷移動型三元錯体遷移状態の三重項→一重項の系間交差および生成ペルオキシアニオン中間体の錯体形成安定化に寄与していると考えられる。 2.Co(Salen)を触媒とするモデルクエルセチナーゼ反応の活性中間体[=基質アニオン・Co(III)二元錯体]がDMF中で酸素を取り込む機構を解明するために、数種の二元錯体誘導体を合成し、それらのDMF中のサイクリックボルタンメトリーを系統的に結果、二元錯体がイオン解離して平衡的に遊離の基質アニオンとコバルト(III)カチオン錯体とを生成し、酸素が基質アニオンに非ラジカル的二分子反応で取り込まれ、生成物アニオンを生成し、この生成物アニオンはさらに、コバルト(III)カチオン種と平衡的に錯体化することを明らかにした。 3.2,6-t-ブチルアニリン類をCo(Salen)触媒によるt-ブチルヒドロペルオキシド酸化し、ニトロベンゼン誘導体が得られることを見出した。新規官能基変換反応として興味深い。反応初期に生成するt-ブチルアルコキシラジカルによる水素ひき抜反応機構を含んでいる。 4.フェニルグリオキシサール誘導体のアルコール溶液にCo(Salen)誘導体を触媒量加えて60°Cに加温すると高送択的にマンデル酸エステル誘導体に変換されることも見出した。
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