研究概要 |
RANは多様な高次構造をとり多彩な機能を担う。この機能性RNA分子の高次構造をX線構造解析で原子レベルで明らかにした。bacteriophage T4のintercistronic領域に高頻度で見られる塩基配列UUCGは転写調節に関与する。この配列を持つRNAオリゴマー(配列UGAGUUCGGCU)の溶液学的研究では、ヘアーピン構造で、熱力学的に安定構造であることが示されている。結晶構造解析の結果、この分子はヘアーピン構造ではなく、2本鎖の2重らせん構造であることが明らかになった。このためらせん中央部分に連続した4つの非ワトソン-クリック型塩基対(2つのGUと2つのUC塩基対)を含んでいた。結晶化はpolyethyleneglycolを沈殿剤としNaCl,spermidine存在下の蒸気平衡法で行なった。分解能1.8Aの回析データを用い、水分子49個を含む337個の非水素原子の座標を平均0.2Aの精度で決まり、最終信頼因子は16.7%である。分子5'末端にあるU塩基同士はUU塩基対を形成し2重らせん分子間でのりの役割をし、らせん構造が結晶C軸方向に連続する構造としていた。1ターン当たり13残基のらせんとなるが、このUU塩基対でツイスト角が異常で、他の部分では標準のA'構造(1ターン当たり12残基)がほぼ維持されていた。S.M.Freierらの熱力学パラメーターを用いて、溶液状態での2重らせん構造とヘアーピン構造の比較を行なったところ2重らせん構造が安定であることを示した。従って、ループ構造に熱力学的に不明の安定化機構が存在している。水溶液中では塩基間の疎水的相互作用が優先し、このUUCGの疎水コアが優先的にでき、周りの水との接触部分は糖一リン酸骨格でミセル状態になっていると思われる。従来の核酸で行なわれている結晶化条件で、この構造を結晶格子内で安定に存在することは困難である。新規な結晶化条件を検討していく必要がある。
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