氷結晶の表面、下地との界面及び粒界面における擬似液体層の微視的構造の研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04227203
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (20113623)
• 研究分担者: 山本 正樹 東北大学, 科学計測研究所, 助教授 (00137887) ; 石崎 武志 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (80212877) ; 後藤 明 北海道大学, 工学部, 助手 (20205587)
• キーワード: 分子動力学法 / 氷結晶 / 表面融解 / 擬似液体層 / 自己拡散係数 / 形態形成 / 界面張力 / 界面カイネティック係数

研究概要

1.氷結晶表面の構造の分子動力学法によるシミュレーションを行った。水分子のモデルとして、TIP4Pを用い、分子数564個で氷結晶構造を構成し、{0001}表面と{1010}表面の双方について計算を行った。その結果、両表面とも融点近傍において擬似液体層が再現され、その動的性質の解析が可能になった。まず、擬似液体層の厚みは、-5℃以下では{1010}面の方が{0001}面上より大きいが、-5℃以上ではこの関係が逆転した。これは、偏光解析による測定結果と定性的であるが一致している。また、擬似液体層内での水分子の自己拡散係数が求められ、表面最外層では水中での自己拡散係数に近いが、2層目、3層目になる程、この係数は急激に小さくなることが示された。これは、擬似液体層の内部は、一様な構造ではなく、連続的にその性質が変化していることを示唆する。
2.氷の表面・界面での擬似液体層内の水分子の自己拡散係数をNMRにより測定した。測定した系は、グラファイト叉はベントナント粉末と氷との混合物である。その結果、自己拡散係数は、10^<-9>〜10^<-10>cm^2/secのオーダーであることが見い出された。この値は、水の自己拡散係数より4桁程小さく、上記1のシミュレーションの結果とも大きく異なる。これは、測定では擬似液体層内のすべての水分子に対する拡散係数の平均を求めていることになるため、水の値より極めて小さくなるものと考えられる。
3.氷結晶の形態形成実験も実行した。形態形成機構が、界面張力と界面カイネティク係数の三次元的な異方性を考慮することで合理的に説明できることが示された。
4.ごへい形と呼ばれる雪結晶の形態形成の計算機シミュレーションを行い、拡散場のゆらぎと形態変化との関連が議論された。

研究成果

• [文献書誌] Yoshinori Furukawa,Ikuo Ishikawa,Msaki Yamamoto: "Experimental study for melting transition at interface between ice and ice substrate" Proceeding of the Fifth Topical Meeting on Crystal Growth Mechanism. 343-348 (1992)
• [文献書誌] Yoshinori Furukawa,Wataru Shumada: "Morphology of the ice crystal grown in supercooled water" Phisics and Chemistry of Ice ed N.Maeno and T.Hondoh(Hokkaido Univ.Press). 299-304 (1992)
• [文献書誌] Akira Goto,Kazuhiro Akiya,Takeo Hondoh,Yosinori Furukawa,Toshio Kuroda,Takayoshi,Shimuro,Jimpei Harada: "Characterization of the surface of ice crystal by X-ray CTR scattering" Phisics and Chemistry of Ice ed N.Maeno and T.Hondoh(Hokkaido Univ.Press). 194-199 (1992)
• [文献書誌] Akira Goto,Kazuhiro Akiya,Takeo Hondoh,Yoshinori Furukawa,Takayoshi Shimura,Isao Takahashi,Jimpei Harada: "Characterization of the (0001) surface of ice Ih crystal by the crystal truncation rod scattering with the use of a synchrotron radiation" Journal of Crystal Growth. 121. 360-364 (1992)
• [文献書誌] Yoshinori Furukawa,Wataru Shimada: "Experimental study of the pattern formation of ice crystal grown in supercooled water" Pattern Formation in Complex Dissipative Systems ed.s.Kai(World Scientific Press). 14-22 (1992)
• [文献書誌] Yoshinori Furukawa,Wataru Shimada: "Pattern formation of ice dendrite grown in supercooled water" Applied Electromagnetics in Materials and Computational Technology ed.T.Honma,I.Sebestyen and T.Shibata(Hokkaido Univ.Press). 111-114 (1992)
• [文献書誌] Yoshinori Furukawa,Ikuo Ishikawa: "Direct evidence for melting transition at ionterface between ice and glass substrate" Journal of Crystal Growth. (1992)
• [文献書誌] Yoshinori Furukawa,Wataru Shimada: "Three-dimensional pattern formation during growth of ice dendrite-its relation to universal law of dendritic growth" Journal of Crystal Growth. (1992)
• [文献書誌] 古川 義純: "氷の表面および界面微細構造と結晶成長" 応用物理. 第61巻第8号. 776-787 (1992)
• [文献書誌] 古川 義純: "偏光解析法による氷結晶表面の擬似液体層の研究" 雪氷. 第54巻第4号. 381-389 (1992)