シリコン(113)表面上のシリコン成長中の原子的構造の変化をしらべた。清浄なシリコン(113)の表面は3×2構造をとることが知られている。この3×2表面上のホモエピタキシャル成長の結果を以下に示す。室温から約200℃の基板温度においては、シリコン成長中の反射高速電子回折(RHEED)強度は振動し、RHEED図形は1×1構造を示した。この時の強度振動の減衰率は入射方位によって大きく変化し、この結果から、エピタキシャル成長層は単結晶となっているが、表面層は多くの欠陥を含む無秩序層が形成されていると結論した。基板温度260℃から450℃の温度領域では成長中と成長後の表面構造が異なることを見い出した。この温度領域においては、成長中のRHEED図形は3×1精造を示し、強度振動の減衰も見られなかった。このことから、この温度領域においては、テラス上に前駆状態としての3×1構造が形成され、この構造が蒸着原子による2次気体雰囲気下で安定になっていると考えられる。基板温度450℃から600℃の温度領域では表面におけるステップ分布に依存して成長構造が変化した。この温度領域ではテラス幅が広い場合にはRHEED強度振動が観測され、テラス上核生成を伴なう、ほぼ完全な層状成長であると結論した。これに対し、ステップ密度が多く、テラス幅が小さい場合にはRHEED強度は振動せず、強い減衰を示した。したがってこの場合ステップからの成長による多層成長と考えられ。このステップ成長にはこの温度領域では一様に起きていないことを示唆している。さらに高温の700℃においては成長はステップ密度によらず、一様なステップからの成長となった。このように(113)表面上では室温においてもエピタキシャル成長し、成長中の前駆状態として3×1構造を形成するとともに、低温ではステップ成長は一様ではないと結論した。
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