研究概要 |
今年度は抽象化に基づく類推を用いた複数領域からの知識獲得の実現に向けて,様々な観点から研究を進めてきた。システム理論的な観点からは,複数領域からの類推に適した表現形式を決定するために,問題解決に適した表現形式について理論的考察を試みた。これにより,連続的な類推として複数領域からの知識獲得を捉えた,複数領域からの知識獲得への拡張が期待される。認知科学的な観点からは,人間のプログラミング過程の観察の分析を行ってきた。人間の問題解決においては,複数のソースからの情報を利用して,複雑な問題を解決できる場合がある。このような場合は,単独のヒントでは理解できないが,複数のヒントが与えられれば,目標概念が認識されるような場合に相当していると考えられる。したがって,各ヒントを抽象化図式として捉えれば,新しい図式が合成でき,合成された抽象化図式を用いて新しい問題が解決できることがわかり,複数領域からの情報の合成,具体的には抽象化図式の合成を行う方法についての考察及び実験を行ってきた。抽象化図式とは,過去の経験を抽象化して記憶しておく図式であり,高階の論理式で表現される。抽象化図式の合成には,高階単一化技法を用いることによって,説明に基づいて抽象化図式の合成を行うことができた。高階単一化技法を推論に直接利用するのは,適当な制約がなければ,非効率的となる。効率化を図るには,相違性を利用することが考えられる。抽象化図式を扱う場合,例えば抽象化図式の合成には,いかに相違性を効率良く扱うかと言うことが重要であり,相違点が明確に記述されていなければ抽象化図式の利用が困難になる。逆に,相違点が容易に認識できれば,共通性を写像することは比較的容易であるとも言えるであろう。相違点を特定のクラスに限定することによって,複雑なプログラム間の類推が可能となることがわかり,相違点を限定した抽象化に基づく類推に関しての部分的な検討を試みた。
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