研究概要 |
本研究では塩分や溶存酸素の輸送、熱輸送、質量輸送に果している海水流動の物理過程の役割を解明することを目的として,東経165度線に沿って北緯50度から南緯5度までの亜寒帯、亜熱帯、熱帯に及ぶ南北断面における緯度1度毎,海底付近までのCTDロゼット採水観測により温度、塩分、溶存酸素、密度場を観測する。平成3年度の白鳳丸航海により北緯40度以南の観測を実施し,今年度はその解析を行い,亜寒帯断面の上層では北太平洋西部で形成された低塩分水が、そして亜熱帯断面の中層には西に運ばれている低塩分水の分布を確認した。その下層の1200mを中心にした低酸素水を、そして低層には南極を起源とする底層水の分布とその特性を明らかにした。密度分布をもとに各層の水平流速を評価し、塩分、溶存酸素、海水の輸送量の評価を進めている。いくつかの緯度帯では東西方向にもCTD観測点をとり、絶対流速の評価も試みている。北緯40度以北のカムチャカ半島沖までの観測を平成5年5月に予定している。また、平成3年に北緯30度付近の5点に設置した係留流速計の回収を行い,流速記録から平均流速を求め密度分布に基づく評価値と比較する。また、渦動拡散係数や渦レイノルズ応力を評価し、本研究で構築する力学モデルと対比することにしている。 黒潮続流域では冬季の冷却によって約400m層まで18℃台の一様な温度の亜熱帯モーデ水が形成され,夏季には四国海盆まで広がっている。研究船ならびに東京-小笠原定期航路船による温度と流速の観測を実施して亜熱帯モード水の輸送を調べ,その経年変動を明らかにした。
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