1.堆積物中のアルキルベンゼンの水平分布 東京湾内湾外の表層堆積物中のアルキルベンゼン(陸起源の汚染物質で、大気へ放出されず河川からの輸送の指標になりうる化合物)分析した。アルキルベンゼン濃度は、湾奥で高濃度であったが、横浜沖から湾口へと減少し、湾口では検出限界以下となった。しかし、湾外の堆積物中(金田湾沖約7km)では湾奥に比べれば低濃度であるが、確かにアルキルベンゼンが検出された。このことは、河川から供給された物質が湾外に運ばれ堆積していることを示している。今後はさらに外洋へ向かって堆積物試料を採取・分析し、陸起源物質の水平輸送の範囲を明らかにしていく必要がある。 アルキルベンゼンの異性体組成から、湾奥に比べて横浜横須賀沖の堆積物中のアルキルベンゼンは好気的分解が進んでいることがわかった。また、湾外の堆積物中のアルキルベンゼンの分解度は横浜横須賀沖よりも低く、湾奥のものと同程度であった。湾奥に堆積していた粒子が横浜横須賀沖での好気的な分解を受ける機会が少ないまま湾外へ排出され嫌気環境下に堆積している可能性が考えられた。 2.湾外の柱状堆積物中のアルキルベンゼンの鉛直分布 1970年以降に使用(水域への放出)が始まったアルキルベンゼンが9cmの深さまで減少傾向を示さずに比較的一様に分布していた。このことは、この水域の堆積速度が数mm/年以上の速い速度である可能性、活発な鉛直混合、撹乱の大きい堆積環境である可能性等が示唆された。今回は採泥器の関係で採取できたコアが短かったが、今後数十cmのコアを採取・分析し、湾外での堆積の規模を明らかにしていく必要がある。
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