暗黒星雲における分子とイオンの存在量の時間発展と分子形成の反応ネットワークについて、次の研究を行った。 1.基本的な化学反応ネットワーク(反応数約1400)を利用して暗黒星雲における星間分子の形成を調べ、その結果を論文にまとめて発表した。 (1)ガス雲の密度と温度が一定の「疑似時間依存モデル」を利用して、様々な物理的状態(密度、温度)での分子の存在量を求め、その時間変化、密度依存性と温度依存性を明らかにした。また、全体では約450種類、各時刻にはそのうち約200種類の反応が主要なネットワークを構築していることがわかった。 (2)星間雲の力学的進化は、分子形成が定常状態に達する時間よりも短い。ガスの密度の力学的進化と分子の存在量の関係を調べ、進化の違いによって、各分子の存在量とその相対存在比が著しく変化するを明らかにした。 2.最近発見された原始惑星系円盤では、気相中に存在する分子(CO)の割合が大きく変化している可能性が指摘されている。ガス中に含まれる固体微粒子表面への分子の吸着、化学反応などの影響を解明するため、これらの素過程を組み込んで分子の存在量の時間変化を求めた。その結果、低温の暗黒星雲では、微粒子表面への吸着によって、H_2OやNH_3だけでなくCOも気相中から大きく減損することが明らかになった。 3.反応ネットワークをCCSなどの観測的に重要な星間分子を包括するものに拡張するため、反応データ(約3000種類)の収集・整理を行った。「疑似時間依存モデル」の場合について、拡張したネットワークを利用して星間分子の存在量の時間変化を求める数値計算を開始している。
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