研究概要 |
本研究の目的は、センチ波から遠赤外に至る広大な周波数領域で、分光技術を開発する事と、星間分子の分光学的データを充実させる事である。この領域は、分光技術の比較的発達しているマイクロ波・ミリ波領域と、未開拓な遠赤外領域に二分される。マイクロ波・ミリ波領域では高能率・高精度の分光システムを構築し、遠赤外領域ではMIMダイオードの方法で遠赤外光源を作り分光に応用した。対象分子としては、両領域ともまずメチルアルコール(CH_3OH)を取り上げ、同時に星間分子として重要ないくつかの分子を取り上げた。 1.マイクロ波・ミリ波分光:シンセサイズド・スイーパーHP83642Aと周波数逓倍器を組み合わせて6-200GHzまでのマイクロ波分光計を完成した。この装置を使ってCH_3OH分子のスペクトルアトラスを作っているが、吸収強度αが10^<-7>cm^<-1>以上の吸収線について6-200GHzの周波数範囲で測定を終了した。また、このスペクトルを解析するための内部回転に関する高精度の理論を作った。 星間空間に多く存在するCH_3OOCH_3,CH_3OCH_3,C_2H_5CN分子についても上記の周波数領域で測定と解析を行った。今までの測定から星間未同定線の候補として有力なスペクトル線のリストを作った。 2.遠赤外光源の開発と分光:2本のCO_2レーザーとマイクロ波を使う三波混合方式による光源の開発は完了し、二波混合方式の光源は開発中である。前者を用いて10-150cm^<-1>の領域で数多くのスペクトル線を観測した。CH_3OHについては、J≦10,K≦5,n≦2までの準位に対し多くのQ枝シリーズを観測し、帰属を確定した。現在これを解析して分子定数を求めている。金属水素化合物の二原子分子の回転スペクトルを対象としての測定では、LiHの研究が完了し、KHについての測定は終了した。遠赤外域での基本的分子であるH_2O分子のスペクトル線の精密測定を行い、遊離基分子に関しては^<18>OHについて測定は終了した。
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