研究概要 |
本研究は極めて小さい光学位相の変化を超高感度,高安定に計測しうる当研究者独自の方式のループ形ディレイライン干渉計を開発し,重力波検出用干渉計システムの開発にその成果を応用することを目的とするこの干渉計は同一光路の順路,逆路間の位相差を検出するもので,静的には光路差は零となり,マイケルソン干渉計に比べ機械的,熱的に格段に安定となる他,光源に必要とされる周波数安定性は大幅に緩和され,多波長同時計測も可能となり,より高い測定精度が期待できる.本研究ではテスト用モデル干渉計を構成し,実験的検証を行い,実際的な測定システムの構成における間題点を把握することをねらっている.初年度の今回はまずシステムの基本動作,検出感度,周波数特性,無バイアス,高周波バイアス時の検出限界,波長変動に対する安定性等を理論解析し,予期した通りの性能をもつことを導いた.次にアーム長1.5mのミニモデル干渉計を設計,試作し,安定性,検出感度特性等の基本特性について100mWのHeNeレーザを光源に用い,マイケルソン干渉計との比較検討を行った.その結果,背景にHz以下で波長程度の振動が存在する室温大気中,光学定磐上のフリーランニング状態で,ループ干渉計の出力はマイケルソン干渉計の最大出力に比べ千分の一程度のレベルで一定で,その0.3Hz以下の成分には10^<-4>程度以下の変動が見られたが,100kHz程度までの広帯域観測では変動は測定限界10^<-5>以下で観測されなかった.このことから,ループ干渉計では除去しにく低周波光路長変動は勿論,鏡の横振動までほぼ補賞されることが分かった.また,5多重路構造で30mのループ長の干渉計を試作し,その雑音分析も行い,安定性を確認している.この他,このシステムに適した新しいタイプの簡便な光リサイクリング法を考案,さらに波長変動用,被測定位相変化生成用の,位相変調器の作製も進めている.
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