生体システムの機能的適応に関するバイオメカニクス的研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04237102
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 林 紘三郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (90026196)
• 研究分担者: 中村 進治 北海道大学, 歯学部, 教授 (80001791) ; 堤 定美 京都大学, 生体医療工学研究センター, 助教授 (00028739) ; 千原 国宏 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (80029561) ; 尾田 十八 金沢大学, 工学部, 教授 (30019749) ; 伊能 教夫 東京工業大学, 工学部, 助教授 (70126308)
• キーワード: バイオメカニクス / リモデリング / 機能的適応 / 有限要素法 / 膝蓋腱 / 顎骨 / 頚骨 / 矯正

研究概要

本研究は、生体組織の機能的適応、リモデリングの現象の詳細なる把握、並びにそのメカニズムを解明することを目的とする。本年度は、3年間にわたる研究の初年度に当たることから、実験研究では試験装置の設置と整備、解析研究の場合には解析手法の開発と検討を主体としたが、これらを使ってすでに興味ある結果も得られ始めた。研究の成果の概要を以下にまとめる。
1)局所的に露出した家兎膝蓋腱に最小限の手術操作を加えるだけで、in situで任意の大きさと周波数の繰り返し負荷を与えることの出来る試験システムを開発し、予備実験を行った。
2)矯正力によってネコ上顎犬歯を遠心移動させたのち、組織切片を切り出し、コンピュータによってその3次元構築像を作成し、別に行った3次元有限要素法で得られる応力分布との対応を検討した結果、歯骨細胞の出現は歯槽骨に分布する応力に大きく依存することがわかった。
3)CTデータをもとに、ヒト下顎骨の形態の個体別モデルを作成するとともに、同時に得られる骨密度分布から算出した弾性系数分布を用いて、咬合時の力学解析を行ったところ、生体に則したモデリングの結果と見られるオトガイ部の応力上昇が認められた。
4)咬合と頚椎の変形、顎関節頭の形態、下顎骨の骨梁パターンの関係を有限要素法モデルを用いて検討したところ、いずれも力学的条件にかなうリモンデリングが行われていることがわかった。
5)家兎頚骨中央部に小孔をあけ、繰り返し引っ張り負荷刺激を与えたところ、従来引っ張り刺激では顕著には生じないとされていた骨形成が観察された。今後、数理解析によりこのメカニズムを明らかにする。
6)骨形態並びにマイクロCT像にもとづく微細構造の3次最元画像解析手法の開発をほぼ終了した。

研究成果

• [文献書誌] 李 暁陽: "動脈の残留ひずみ解析" 日本機械学会第70期全国大学講演論文集. A. 250-252 (1992)
• [文献書誌] 今井 陽介: "家兎の動脈硬化血管内アテロームの力学的性質および血管壁内の応力分布" 日本機械学会第70期全国大学講演論文集. A. 253-255 (1992)
• [文献書誌] 藤井 恭: "膝蓋腱の力学特性におよぼす定量的負荷軽減の影響" 日本機械学会第70期全国大学講演論文集. A. 247-249 (1992)
• [文献書誌] 林 紘三郎: "顕微鏡組織解析による動脈壁内のひずみ分布の測定" 第3回バスオメカニクスカンファレンス講演論文集. 61-62 (1993)
• [文献書誌] 林 紘三郎: "血管壁の力学的性質" 病理と臨床. (1993)
• [文献書誌] K.Hayashi: "Experimental Approaches on Zeasuring the Mecherical Propeties and Constifutive Lows of Arteial walls" Trans,ASME,J.of Bionechanical Engireering. (1993)
• [文献書誌] N.Yamamoto: "Mechanical Ersponse of Rabbit Ateior Cruciote Ligament to Overloading" Proc.of 7th International Conferenceon Biomedical Engineering. 110-112 (1992)
• [文献書誌] K.Hayashi: "LDA Studirs of Flow characteistico in a Vetehiobasilar Artery Junction Model" Proc.of 7th International Conferenceon Biomedical Engineering. 61-64 (1992)
• [文献書誌] K.Hayashi: "Effects of complete and Parfial Stress Shielding on the Mechornical Properfies of Rabbit Padrllar Tendon" Proc.of 8th meeting of the European Society of Biomecharico. 17 (1992)
• [文献書誌] 伊能 教夫: "かっ骨のこう合応力の三次元有限要素解析" 日本機械学会論文集(A編). 58. 1042-1047 (1992)
• [文献書誌] 伊能 教夫: "骨格のモデル化とシミュレーション" バイオメカニズム学会誌. 16. 174-180 (1992)
• [文献書誌] N.Inou: "Biomechanical Study of Human Mandible Based on the X-Ray CT Data" Proc.7th International Conference on Biomedical Engineering. 318-320 (1992)
• [文献書誌] 伊能 好夫: "下顎骨の生体力学的研究-X線CTに基づくモデリング手法とその有限要素法解析-" 第3回バイオメカニクスカンファレンス講演論文集. 87-88 (1993)
• [文献書誌] 尾田 十八: "生体の適応機構とその力学的測面" 第31回日本ME学会大会論文集. 30. 141 (1992)
• [文献書誌] 尾田 十八: "衝撃負荷を受ける骨.軟骨モデルの動的応力とその評価" 日本機械学会論文集(A編). 58. 1048-1054 (1992)
• [文献書誌] 尾田 十八: "関節部の軟骨組織に働く衝撃力について" 整形外科バイオメカニクス. 13. 305-308 (1992)
• [文献書誌] 尾田 十八: "生物の適応機講とその力学的モデル" BME(日本ME学会誌). 6. 31-41 (1992)
• [文献書誌] 尾田 十八: "液体を有する多孔質体の衝撃緩和効果について(体生関節部における衝撃問題へのアプローチ)" 平成4年度衝撃波シンポジウム講演論文集. 155-158 (1992)
• [文献書誌] 尾田 十八: "生体骨における力学的刺激と骨形成に関する研究" 日本機械学会北陸信越支部第30期総合講演会論文集. (1993)
• [文献書誌] 江頭 猛: "骨構造のビジュアルプレゼンテーション" システム制御情報学会研究発表講演会論文集. 36. 575-576 (1992)
• [文献書誌] S.Tsutsumi: "Pseudo-3D Conputer Simulation for Pathogenesis and Rehabilitation of Cervical Sprae Deformity by Malocclusion" Int.J.of Industrial Eigomomics. 9-2. 137-144 (1992)
• [文献書誌] S.Tsutsumi: "Computer Simulation of Biomecharical Adaptation of Imlant-Supporting Tissues" J.of Dental Reseach. 7-S. 165-165 (1992)
• [文献書誌] 上尾 豊二: "有限要素法による梶体骨梁形成シミュレーション:とくに正常骨と粗鬆骨での骨梁形態の差の生じる理由" 臨床型形. 27. 809-814 (1992)
• [文献書誌] 岡 正典: "生体関節と人工関節の負荷機構(第4報)" 整形外科バイオメカニクス. 13. 343-347 (1992)
• [文献書誌] 堤 定美: "新形状をもつKU型人工膝関節の膝屈曲運動にともなう応力分布-キネマティクスタビライザー-膝との比較-" 整形外科バイオメカニクス. 13. 381-385 (1992)
• [文献書誌] 森 孝雄: "顎関節部の形態時変化に関する生体力学的シミュレーション第2報 下顎頭の前頭断面の形態差" 日本顎関節学会雑誌. 4. 230-238 (1992)
• [文献書誌] 尾田 十八他: "生物と機械" 共立出版, 166 (1992)