今年度は、従来から行ってきたゲルの基礎的物性研究を以下の3つの方向に発展させた。 (1)広い周波数範囲での弾性定数及び弾性損失の測定: 超音波パルス法によりMHz領域での音速及び吸収を測定した。対象とした試料はNIPAゲルであり、室温の脈潤相での体積弾性率は、静的に測定された値(浸透弾性率)に比較して約10^5倍も大きい事が分かった。収縮相での測定及び体積相転移における弾性異常の測定は現在続行中である。 (2)バイオゲルの機械的性質の測定: 新たに生体質由来のゲルの物性測定を開始した。まず、試料の調整が容易なカラジーナン、アガロース、ゼラチンの各ゲルについて、超音波法による音速、吸収の測定を行った。カラジーナンでは、ゲル化点近傍で、音波吸収が極小となる現象が見いだされた。これは、ゾル-ゲル転移の動力学の観点から極めて興味深く、現在理論的な解明の可能性を検討している。 (3)ゾル-ゲル転移の運動学的研究: 種々の合成及び生体高分子のゾル-ゲル転移を、濁度及び施光能の測定によって調べ、ゾル-ゲル転移の進行速度によって、ゲル化機溝を考察した。NIPA/WATER系では、ゾル-ゲル転移は1秒以下で起る事が分かった。この事から、スピノーダル分解による架橋点形成というモデルが提出された。
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