今年度の研究目的は、多自由度ロボットの位置精度および多軸荷重センサの分解能が、はたして関節の摩擦測定を行うのに十分か否かを検討する点にあった。当該研究予算で購入した備品の内、パーソナルコンピュータを、ロボットの制御プログラムを実行し同時に荷重センサからの情報を処理するために用いた。また、収集されたデータを図表として出力し、保存するために、同じく備品として購入したレーザープリンタを用いた。 任意の表面で摩擦測定を行うには滑り面の形状に適合した方向に運動が構成されなければならない。しかし、生体関節は、軟部組織に覆われているために、視覚的な情報が得られない。そこで、本研究では、関節全体に加わる荷重を多軸荷重センサでセンシングし、その情報をもとに、ロボットの未端効果器の移動軌跡を決定する方法を用いた。最初に予備実験として人工料表面(平面対球面)での摩擦係数を計測し、摩擦角測定で求めた結果と比較した。その結果、材質が固い場合は制御が困難になると、また、ロボットの動作中に、滑り摩擦と転がり摩擦が混在すると、精度が大幅に低下することがわかった。 次に、試験片としてイヌの膝関節を用いた実験を行った。まず、関節を乾燥させた状態(変形性関節症など、関節が異常をきたした状態のモデル)、および表面に正常関節液を塗布した状態(正常な関節のモデル)について、摩擦測定を行った。制御を単純化するために、摩擦距離を、2mと小さくした。その結果、異常関節のモデルでは、摩擦係数0.13、正常関節のモデルでは、別途測定した摩擦係数0.01であった。正常関節の値は、股関節の摩擦測定結果の値と一致した。これにより、多自由度ロボットの位置精度および荷重センサの分解能が、関節の摩擦測定に十分であることを明かにした。
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