研究概要 |
超臨界流体の存在は古くから知られていたが、近年になってその応用性が検討されたため、平衡・輸送物性等の工学的に重要な基本物性の測定データがまだ不充分である。さらに超臨界流体の将来における広範な応用性を考えると、対象とする溶質溶媒の組み合わせは多種多様であり、適用範囲の広い物性推算法の確立が必要である。本研究ではこの様な観点から実験・解析を行い、以下に示す結果を得た。1,平衡関係における課題は非対称性の大きな混合系の相平衡挙動の解明であり、斎藤は非対称性混合系として成分間の極性の相違を検討することになっている。本年度は発酵アルコール濃縮・分離に重要なCO_2/エタノール/n-プロパノール/水系を対象として相平衡関係の測定を行った。一方、推算ではグループ寄与状態方程式を採用し、ほぼ良好な結果が得られることを示した。このようにグループ寄与状態方程式の適用例を示したことは、分子構造からの予測という最終目標を達成するために極めて重要な知見である。2,舛岡は非対称混合系として分子サイズの効果を検討することのなっており、CO_2/n-アルカン並びにエチレン/ポリ酢酸ビニルの混合系の気液平衡さらに後者の系にベンゼンおよびトルエンを添加した際の無限希釈気液平衡比の測定を行った。CO_2/n-アルカン系についてはSRK状態方程式により良好に表せることを示し、後者の系についてはSanchez-Lacombの状態方程式により測定結果の定性的傾向が説明し得ることを示した。3,田中は超臨界の非定常熱伝導率測定装置の試作を行った。装置の健全性をアルゴン、窒素、酸素などの標準物質を行って確認し、代替フロン冷媒の熱伝導率の測定を行った。4,横山は振動円盤粘度計により、CHF_3とN_2Oの粘性率の測定を行い、修正Enskogの式でほぼ良好に予測し得ることを示した。また、この実験より粘性率の臨界異常が存在することを示した。
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