研究概要 |
本研究では、超臨界流体の特異な溶媒特性を高度に利用した新しい分離プロセスの開発を目的とし、以下の研究を推進した。 1.高級脂肪酸および高級アルコールの超臨界二酸化炭素に対する溶解度データを35℃にて蓄積した。酸およびアルコールともにメチル基1個の増減でも、ある程度の溶解解差が生ずることが示された。また、2,6-ジメチルナフタレンおよび2,7-ジメチルナフタレンの超臨界二酸化炭素に対する溶解度を35℃〜55℃にて測定した。得られた溶解度曲線には交差圧力が存在するが、接近してるため述行析出法による分離は困難であった。さらに高圧循環式気液平衡測定装置を試作し検証実験を行った。 2.リモネン/リナロール混合物を吸着剤ならびに精留塔で分離した。シリカゲルを用いたところ、液相で吸着分離し、超臨界二酸化炭素で脱着回収する方法が有効であった。温度勾配を付与した精留塔を備えた抽出装置を試作し、還流効果により分離性能が向上することを実証した。また、天然物固体からの抽出過程の速度論的考察を行った。 3.超臨界流体晶析装置の試作を行った。装置は半回分型流通式であり、加圧・送液部、対象物の溶解・抽出部、抽出物からの高純度目的物質の晶析・精製部および溶剤である超臨界流体の流量測定部からなる。構造異性体である2,6-ジメチルナフタレンを目的物質とし、溶剤として超臨界二酸化炭素を用い、溶解度を測定した。 4.多量処理用の分取超臨界クロマト法を開発するための基礎的検討を行った。多量試料の導入を可能とする新しい導入法を開発し、その最適化を行うとともに、試料高負荷時における溶出挙動の測定法を確立した。また屈折率検出器の使用を可能とするセル圧力の新しい制御法を開発した。高級脂肪酸に適用したところ、高回収率かつ高純度で、迅速な精製が可能であった。
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