不均一触媒反応などのように、固体表面が化学反応の大きな影響を及ぼす場合が少なくない。将来、超臨界流体を用いる化学反応プロセスでも固体表面が重要になることが予想されるので、そのための研究手段の確立と、基礎的知見を得ることを目的として研究を行った。 1.測定手法の開発 表面における分子の吸着状態を分子レベルで、かつin situに研究する手段として、表面増強赤外分光法を開発した。はじめに、大気中、ならびに水溶液の中の金属表面測定で測定技術を確立した。ついで、その測定原理を理論的に確立した。こうした基礎研究に基づき、新たに作製した高圧赤外分光セルを使用して、超臨界二酸化炭素中の銀表面に吸着した分子の吸着構造、ならびに配向状態の解析にはじめて成功した。 2.本研究で得られた知見 (1)今回測定した数種の分子では、銀表面における吸着構造は、大気中、溶液中の場合と変わらなかった。 (2)圧力の増加に伴って、吸着量が増大した。これは、圧力により、超臨界流体中の溶媒和構造が変化するためであると推定される。 (3)圧力による吸着分子の吸光度変化は認められなかった。これは、均一系の結果と異なる。 (4)金属表面の汚染物が、超臨界二酸化炭素によって除去できる。よって、フロンに代わる洗浄剤として利用できる。 (5)類似吸着分子のスペクトルの比較から、溶質と溶存分子との相互作用を検討することができ、溶媒和構造の詳細が、均一系よりも単純化された形で検討できる可能性がある。 3.今後の課題 超臨界流体中の表面反応をin situに追及する手段をほぼ確立できたので、今後、いろいろな表面反応が研究できる見通しがついた。ただし、表面状態、ならびに反応を如何にコントロールするかという課題が残っているので、今後さらなる検討を続ける。
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