研究概要 |
金属間化合物の実用化に当っては強度および靱性と同時に耐環境性の向上が必要とされる。環境との相互作用では高温酸化、ならびに環境から材料中に取込まれる水素および酸素による脆化現象が重要である。もっとも実用化が近いTiAlについて高温耐酸化性を向上させるために、合金元素添加と表面処理およびそれらを組合わせる方法を研究した。合金添加については、HfあるいはZrの少量(0.2〜0.5mass%)添加により、TiAlの1300Kまでの耐酸化性が大きく向上することを見いだした。表面処理に関しては、マグネトロンスパッター法で作成した厚さ30μmのCo-30Cr-4Al被膜がTiAlの1300Kまでの耐酸化性を向上させることを明らかにした。合金元素添加と表面処理の組合わせでは、0.2mass%Hfの添加とCr_2O_3/Crパック処理の組合わせでTiAlの耐酸化性が大きく向上することを見いだした。 金属間化合物の水素脆化を合金化によって抑制する方法およびその機構について検討を加えた。Ni_3(Si,Ti)に微量のBとCを添加することにより大気ならびに蒸留水環境における脆化を完全に、さらに乾燥水素ガス中における脆化を一部抑止できることを明らかにし、結晶粒界における水素の凝集能ならびに(あるいは)拡散能の低減により結晶粒界破壊が抑制されることを明らかにした。また微量のCr,Mn,Feの合金化によってNi_3(Si,Ti)の大気中および蒸留水中の脆化を抑制することが可能となった。Co_3Tiの環境脆化がat%レベルのFeおよびAlの添加によって抑制されるのは合金表面における水分の原子状水素への分解プロセスの抑制によって生じることを明らかにした。Ni_3(Al,Ti)単結晶、Ni_3(Si,Ti)単結晶について、環境からの水素が遮断される場合には、極めて微量(ppmオーダー)の残留水素が延性に影響を与え、一方環境からの水素は10^<-6>Torrの高真空中でも依然として延性に影響を与えることを明らかにした。
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