研究概要 |
金属間化合物の組織制御の基礎過程である拡散に関する研究は乏しい。金属合金中の自己拡散は空孔のランダム運動によって起こるが、規則合金、金属間化合物においては原子の規則的配列を乱すような空孔のランダム運動は起こり難く、その拡散機構は複雑であり、未解決の問題も多い。本研究では、B2型金属間化合物の拡散の特徴やL1_2型金属間化合物中での不純物拡散の測定結果を報告する。 B2型構造を有する10数種の金属間化合物について構成元素の拡散係数を融点で規格化した温度に対してプロットしてデータを検討した結果、活性化エネルギーQは融点Tm(K)と、Q=0.13Tm±20%kJmo1^<-1>の関係があり、前指数項D_0は、D_0=(0.1〜10)×10^<-4>m^2s^<-1>の範囲にあることが見いだされた。 両方の構成元素の拡散係数の大きさを知ることは拡散機構を明かにする上で重要である。しかしながら、L1_2型金属間化合物での従来の測定結果によれば、残念ながら両拡散係数が測定されている系は存在しなかった。そこで、我々は ^<68>Geの放射性同位元素が共にトレーサーとして利用できることに着目し、L1_2型Ni_3Ge化合物中のNiとGeの自己拡散の測定を行なった。その結果、Niの拡散係数はGeのそれより20〜30倍も大きく、B2型金属間化合物の場合と異なっていることを見い出した。この結果は、幾何学的な立場から定性的に説明できることを示した。 Co_3Ti中のMnの拡散係数の温度依存性を測定した結果、Mnの拡散挙動はFeの挙動に類似しており、Coの自己拡散挙動とは大きく異なることを見いだした。 そのほか、本研究では、 ^<16>O(d,p)^<17+>O核反応検出法を用いてTiA1中の注入酸素の拡散係数の系統的な測定を行い、酸素の拡散がきわめて遅いことを初めて明らかにした。
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