研究概要 |
超伝導状態での核緩和時間の異方性の温度依存性から、超伝導エネルギーギャップが等方的であるのかノードを持つ異方的であるのか(s波かd波か)を検証する目的で、YBa_2Cu_3O_<7-y>の良質な試料でCu核緩和時間の結晶軸に関する異方性の温度依存性を零磁場(NQR)、低磁場(0.5T)、高磁場(7T)NMRで測定し詳細な知見を得た。 零磁場NQRの緩和率の温度変化は、高磁場NMR(Wc(H=7T))のそれと比べ緩やかである。高磁場での緩和時間の異方性比(Wab/Wc)はTc以下で減少し、35K付近まではほぼ一定の値であり、さらに低温になるにつれ減少する。また低磁場(0.5T)の結果は高磁場でのそれと同様にTc以下でいったん減少するが、70K以下で増加の傾向にある。このように超伝導状態での緩和時間の異方性比はの温度変化は、大きな磁場依存性を示し、その温度変化の様子は定性的に異なることを明らかにした。 また、Tc以上のノーマル状態でのRは温度に依存することを見いだした。これは磁場方向に対するいわゆるform factorの違いを反映し、χ(q,ω)のq=0とq=Qafでの成分の温度依存性に差異があることで理解できる。理論的に示されている結果と対比して超伝導ギャップの対称性を議論するには、酸素サイトの緩和率とのスケーリングを含めて、緩和率の磁場効果をさらに詳細に検討する必要がある。
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