Bi系超伝導体の還元処理によるTcの上昇とCuO_2面の構造変化

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04240208
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 大嶋 重利 山形大学, 工学部, 助教授 (40124557)
• 研究分担者: 奥山 克郎 山形大学, 工学部, 教授 (70007011) ; 神戸 士郎 山形大学, 工学部, 助手 (20211188)
• キーワード: 酸化物高湿超伝導体 / ラマン散乱分光 / Bi系2212相 / 還元処理 / Y,La置換

研究概要

Bi系超伝導体を還元処理すると、2201相ではTcが25Kから40Kまで、2212相では75Kから100Kまで上昇することが明らかにされてきた。このTcの上昇は、CuO_2面のキャリア濃度の最適化だけでは説明することができず、CuO_2面のミクロな構造変化と関係していると考えられている。本研究は、CuO_2面の電子構造や結合構造をXRD、湿式滴定、ラマン散乱等の手法によって検討し、超伝導性との相関を調べることを目的としている。
ラマン散乱スペクトルによって、CuO_2面のミクロな構造変化を観察した。全てのBi系2212相のサンプルで、466cm^<-1>と630cm^<-1>付近にピークがみられた。過剰電荷を、Ca→YまたはSr→La置換によって減らしたものと、還元処理によって減らしたものでは、ストークスシフトに与える影響が大きく異なった。YまたはLaを置換して過剰電荷を減らしてゆくと、628cm^<-1>のピークが低波数側にシフトした。これに対し、Arの還元処理によって過剰電荷をへらしてもピーク位置はほとんど変わらなかった。同様に、466cm^<-1>のピークはYまたはLa置換によって低波数側にシフトしたが、Arの還元処理ではほとんどシフトがない。Boekhaltらによると、466cm^<-1>のピークはCuーOplaneのout of plane in phaseに、628cm^<-1>のピークはCuーOapexのz vibに帰属される。従って、YやLa置換はCuO_2面の形を変化させながら過剰電荷を減らしているのに対し、Arの還元処理はCuO_2面の形をあまり変えずに過剰電荷を減らしていること結論される。これは、CuO_2面の形をあまり変えずに過剰電荷を減らしてゆくと、過剰電荷0.1付近まではTcがほとんど変化しないことを意味し、従来の過剰電荷とTcの関係と異なることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] S.Ohshima,K.Okuyama,K.Sawaya and K.Noguchi: "Surface Resistance of Bi_2Sr_2Ca_1Cu_2Oy Strip Lines Made from Green Sheet" Jpn.J.Appl.Phys.31. 539-542 (1992)
• [文献書誌] S.Kambe,S.Ohshima and K.Okuyama: "Change in the Bu and Cu Valences and Structure of Bi 2212 Phase by Ar Annealing" Advances in Supercondutivity. 4. 267-270 (1992)
• [文献書誌] 大嶋,菅野,神戸,奥山,中島,八田,藤沢: "中間プレスしたBi2223試料の臨界電流密度" 低温工学. 27. 430-434 (1992)
• [文献書誌] S.Ohshima,K.Okuyama,K.Sawaya and K.Noguchi: "Surface Resistance of the BSCCO Microstrip Lines" Advances in Superconductivity. 4. 965-968 (1992)
• [文献書誌] 大嶋,河野,奥山,沢谷,野口: "Ag_2O,Agを添加したYBCOストリップ線路の超電導特性及び表面抵抗" 低温工学. 27. 408-413 (1992)
• [文献書誌] S.Kambe,S.Ohshima and K.Okuyama: "Change in Cu-O Bond Length and Rhompic Distortion for BiSr(CaY)CuO by Yttrium Substitution and Ar Annealing" Int.Symp.Superconductivity(ISS 92). (1993)