研究概要 |
1.酸化物高温超伝導体を理論的に取り扱うときの有力なモデルと考えられている2次元d-pモデルについて,以てから,宮永昭治,福山秀敏と共同で研究してきた.銅と酸素のサイト間のエネルギー差と最近接サイト間のクーロン斥力により,ホールどうしに有効引力が働く,ホールどうしに有効引力が働く.しかしそのような単純なモデルでは,有効引力が現れる場合には必ずホールが全て集まり相分離になってしまい,超伝導状態にはなれないことが解った.相分離については,以前からもt-Jモデルにおいても議論があったが,長距離のクーロン斥力のことが考慮されいない.そこで,d-pモデルでサイト間のとび移りを無視するという簡単なモデルであるが、長距離クーロン相互作用を考慮して,系の基底状態を考察した.その結果,長距離クーロン相互作用を完全な長距離にすると有効引力も現れなくなってしまうが,遮蔽距離をパラメータとして導入すると2ホール間の有効引力が存在し,相分離は生じないというパラメータ離域があることが示せた. 2.有機超伝導体α-(BEDT-TTF)_2I_3で最近発見された非常に大きな磁気抵抗について,考察を行った.この系は,低元系であり,β想では超伝導が実現している.酸化物高温超伝導体との比較により,高温超伝導のメカニズムを探求する上で,有機導体は,重要な役割を果たすと考えられる.我々は,磁気抵抗の起源を,フェルミ面のネスティングによって生じるスピン密度波に由来するものであるということを示唆した.ネスティングが不完全な場合に,無磁場でスピン密度波が発生していても電気抵抗に少ししか異常が現れず,弱い磁場によって電気抵抗の異常が拡大されるという可能性を示した.
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