研究概要 |
本重点領域の目的を達成するために新規に購入したワークステーションおよびソフトウェアはすでに当該設置場所において順調に稼働しており,すでに下記の実績も出ている.また,消耗品等の使用結果も初期の予定を大幅に変異することなく妥当なものと判断される. 本理論研究班において,本年度達成された成果は以下の通りである. (1)山口は世界最初の有機強磁性体であることが発現されたp-NPNN分子のβ相のX線結晶構造を持つ種々のクラスター(最大5量体)の半経験的分子軌道計算を実行し,分子間有効交換相互作用を求め,その符号を決定する主要因を解析した結果,分子間スピン分極機構が強磁性発現に重要であることを示した。さらに,分子間相互作用を強くして強磁性転移温度を上昇させる可能性についても検討した。 (2)福留は大きな量子ゆらぎを有する電子系を扱う新方法として,共鳴ハートリー・フォック(HF)法を考案し,一次元系のスピン密度波(SDW)秩序を破壊するゆらぎは長距離スピンゆらぎをまとった量子併進およびソリトン対であることを証明した.さらに,ポーラロン強磁性高分子の可能性を理論的に検討し,実験との対応についても考察した. (3)那須は三重縮重したp型軌道電子の遍歴性,電子相関,ヤーン・テーラー型の電子格子相互作用の相互の絡み合いを検討し,強磁性および超伝導性の発現条件を解明した.具体的物質としては,アルカリ金属をドープしたゼロライトおよびアルカリ金属をドープしたC_<60>における強磁性発現の機構を上記の理論モデルにより解析した. (4)北原はスピン依存するラディカル再結合過程について,ラディカルの距離・配向に依存する交換相互作用,併進運動量を取り入れた反応過程,運動量緩和過程に関して,溶媒の分極緩和を取り入れた一般理論を定式化した.現在,具体例に適用しつつある.
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