研究概要 |
ボルン-オッペンハイマー近似により核座標をパラメーターとして電子の運動を解きポテンシャル曲面と電子波動関数中を得る。ポテンシャル曲面上に円錐型交差点があると、一価有限連続な電子波動関数は複素関数となる。さらに核運動のハミルトニアンには振電相互作用より生じるゲージポテンシャルがはいる。本年度は、ポテンシャル曲面上に円錐型交差点がある場合の核運動のシュレディンガー方程式について定式化を行った。 OH_2+H→P-H_2+Hの反応について考察した場合、3つの原子が集まった反応領域ではゲージポテンシャルが無視できず、原子と分子に分れた漸近領域ではゲージポテンシャルはゼロである。反応領域では、電子波動関数は複素波動関数でありシュレディンガー方程式は実であるから中の複素共役中^*もおなじポテンシャル曲面の固有関数である。したがって一般に振電波動関数はΦ=fφ+gφ^*と書かける。ここでfとgは核波動関数である。漸近領域では、基底関数を(φ,φ^*)から(Reφ,Imφ)に変換する。すると核運動のシュレディンガーオ程式の対角項からゲージポテンシャルをなくすことができる。H_3系の場合、反応領域では、ゲージポテンシャルのためシュレディンガー方程式は3つの粉子の巡回置換よりなる群C_3の対称性をもち、核波動関数は、C_3の既約表現に属する。漸近領域ではシュレディンガー方程式はP_3の対称性をもち、核波動関数はP_3の既約表現に属する。上記の基底関数の変換(φ,φ^*)→(Reφ,Imφ)により、C_3の既約表現に属する核波動関数はP_3の既約表現に属する波動関数につながる。
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