本年度は2つのテーマについて非経験的分子軌道法により研究を行った。 1.エーテルへのAl原子挿入反応:ジメチルエーテル(DME)と水分子へのAl原子の挿入反応の比較検討を行なった。この反応はまず金属とO原子との間で錯体を形成する。この錯体形成に関し、軌道理論から錯体形成の実験的指標であるCOC(又はHOH)bendinhモードのシフトに関して説明ずけた。DMEのC-O結合へのAl原子の挿入反応は水分子のO-H結合への挿入と比較し、活性化エネルギーは低いが反応確率は低いことを予測した。これは先のX-H結合への挿入反応デX-H結合への電荷移動が活性化エネルギーを支配するという結論から導かれる結果と一致した。またDMEのC-H結合への挿入反応に関して、挿入化合物Me-0-CH_2-Al-HはKcml/mol以下のエネルギーバリアーでより安定な三員環化合物を生成することが明らかになった。以下のように挿入反応の容易さはO-C>O-H>C-Hの順となり、電荷移動エネルギーと活性化エネルギーの相関性をより一般的に示した。 2.シリレン.ジメチルシリレンのシランおよびメチルシランのS_i-H結合への挿入反応:シリレンによるシランのS_i-H結合への挿入反応メカニズム及びそのナカニズムに基ずいた環換基効果について検討を行なった。LMO-centroid解析を行なった結果、反応はシランから水素原子がマニオンとしてシリレンに付加し、シリルカチオン-シリルアニオン型の錯体を形成し、シリルアニオンのinversionによりジシランが生成するというものである。シリレンおよびシランニメチル基がついた系に対するberrierを計算した結果、シリレンの場合に大きく変化することが明らかとなった。これらの反応の置換基効果はinversionエネルギーによって決められることも明らかにした。
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