研究概要 |
本年度中の成果は下記の通りである. 1.多ヒルベルト空間論的観測理論の発展: 数年来多ヒルベルト空間論的観測理論の整備に務めてきたが一応の完成を見た.総合報告がPhysics Reports誌において出版された(M.Namiki and S.Pascazio,Phys.Rep232(1993)No.6).この観測理論に関連して導入された“波束の収縮"に対する秩序変数の(Decoherence Parameter)は,中性子等の干渉現象の解析にも利用可能であり,引き続き研究中である. 2.数値シミュレーション: 多ヒルベルト空間論的観測理論による“波束の収縮"に対して,複数のディラック櫛形ポテンシャルによる測定器モデルを使う数値シミュレーションを行い,測定器全体の透過係数に対する各部分の微小な反射の効果及透過係数のポテンシャル依存性を調査中である.これらの数値計算がワークステーション上の数値計算の半数を占めている. 3.量子力学的ゼノン効果: 量子力学的ゼノン効果の本質を解明しつつある.論理的検討に基づき実験を提案した.これは現在ウイーンのラウホグループが実行中である(M.Namiki,S.Pascazio,G.Badurek and H.Rauch,Phys.Lett.A179(1993)155.).この目的のため,並木は6月末から7月末にかけてブリュッセルとウィーンを訪問し,約3週間づつ滞在しプリゴジングループ及ラウホグループと討議した. 4.高エネルギー核反応におけるパイオン2粒子干渉: 演算子値ランジュバン方程式に基礎をおく2粒子相関関数等の定式化とそれによる現象分析は終了し,パイオン源の大きさの推定にある程度の結論を出した(M.Namiki and S.Muroya,WU-HEP-93-3Preprint).
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