1)種々の係数空間上での多変数多項式の統一的因数分解法の考案(佐々木)。本算法で扱われる係数空間は、べき級数環、整数環、代数的数体(代数的閉体を含む)、および代数関数体である。計算機代数の分野では、代数関数体上の多項式因数分解は本論文が最初の扱いとなった。その方法は、本報告者らによる近似因数分解の算法を若干拡張したもので、計算効率も非常によいものである。 2)多変数の代数方程式を解く方法の考案(加古、佐々木)。多変数多項式が与えられたとき、主変数に関する根を従変数に関する形式的べき級数あるいは分数べき級数として計算することを考える。従来は2変数の場合が専ら研究され、すでにピュイズー級数の美しい理論と効率的算法が完成されている。本報告者らは多変数(3変数以上)の場合を研究し、並列ヘンゼル構成を使うことにより、全根を同時に計算する算法を考案した。並列ヘンゼル構成法も従来の方法を若干拡張したものである。 3)多重代数拡大体上でのKronecker-Trager法の改良(佐々木)。実際計算によく現われる多重代数拡大は各拡大が互いに独立なものである。この事実を利用することにより、Kronecker-Trager法を効率化した。
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