本研究の目的は可解格子模型の相関関数の計算を量子群などの代数を活用しつつ行なうことにある。この研究的に対し、我々(本重点領研究の他の研究者も含む)は、以下の研究発表欄に示すように、三編の研究論文を提出することができた。それらの概要を説明する。概要の順序は研究発表欄での記入順になっている。 1.ここで扱われている可解格子模型は量子群U_q( _Sl_2)の高いスピンの表現に対応する可解頂点模型である。スピンが1/2の場合は、1973年にバクスターによってその1点関数が計算されている。しかし、高いスピンの場合の1点関数の計算は今まで実行されていなかった。我々は、代数的ベーテ仮説という方法とバクスターのスピン1/2の時のアイデアを組合せ、1点関数の平均を計算した。 2.この論文では、結晶基底とq頂点作用素の関係を考察した。このq頂点作用素は、現在、可解格子模型の理論において中心的な役割演じつつある。q頂点作用素の格子模型への応用としては、IRF型ヤン-バクスター方程式の楕円関数解をq差分方程式の接続係数として捉えることがある。我々はこのq頂点作用素をさらに詳しく調ベ、これが結晶基底を保存することを見い出した。さらに、この事実を応用することによって、ある良い性質を満たす可解面模型の1点関数がアフィンリー環の表現を指標を用いて記述されることを示した。 3.上で述べたq頂点作用素は量子スピン鎖を解析する方法としても非常に有効である。これは、量子スピン鎖の物理的な状態を記述する真空、生成(消滅)演算子などの概念が、q頂点作用素によって具体的に記述されるからである。さらに、この作用をボゾンで表示することによって、量子スピン鎖の相関関数を言積分表示することができる。これを、XXZスピン鎖の場合に行なった。
|