我々は抑制性の伝達物質GABAが関係するシナプスの働きが、視覚野における方位選択性の実現に決定的であるというを考慮して、抑制性の介在ニューロンを神経回路網に組み込んだモデルを提案した。種々の傾きを持った棒状パターンの等確率入力に対する学習の結果、時間が充分に経過して系が平衡状態になった場合に、出力層に方位選択性ニューロンが自己組織化されることをしめした。しかし入力パターンの学習をステップ毎に時間的に追いかけてゆく動力学的学習がどうなるかについては不明である。これは、神経回路網の自己組織化を認識の問題として実用化する上で重要な問題である。また学習は必ずしも平衡状態になる以前に停止する可能性も考えられるので、この点がらも動力学的な学習は重要である。それで、「動力学的にも自己組織化が行われるか?」、また「行われるとしたらどんな解が得られるか?」が当面の問題点である。我々はコンピュータ・シミュレーションの結果、動力学的な学習が自己組織化の結果として、平衡状態の場合と類似か出力層の発火パターンに導くことを示すことが出来た。具体的には、48箇の傾きの各入力パターンに対する出力層のニューロン群の発火パターンを求めてみるとこの発火パターンは平衡解のそれとくらべて、自然さ点でずっと勝っており、スパースコーディングという観点から見ても、より適切なものである。このような神経回路網モデルで入力パターンを等確率で長時間入力してゆくと、神経回路網は学習の結果ある平衡状態に達する。この状態における各入力パターンに対する出力パターンの発火反応は、統計物理学における磁化の平均場理論で記述されることが示された。この際自己場ともいうべき出力ニューロン自身の発火の強さに関係する有効場が対応するイジング・スピン系に作用することが、物理系とは異なる神経回路網系の特徴であることが明かにされた。
|